防災訓練期間中、女の子はバケツに用を足してください

第六話 清め方

「次に、割れ目とお尻の、清め方の……、お手本を見せます……」

 まだ終わりではないのか……。美香はそう思ったが、一般的な排泄の仕方からすれば、今度こそ最後であろうということも、また判断がつく。

「う、ウンチの後はもちろんですが、わ、私たち……、女の子は、お、オシッコの後も、しっかりと割れ目を拭き清めなければ、なりません。お、男の子たちは、お、おち……、おち……、おちん……ちんを、軽く振るだけで、済んでしまうそうで、とてもうらやましいです。でも、私たち女の子は、おち……、おち……、おちんちんが……、ついていないので、仕方がありません……」

 おちんちんという単語を言うたびに、言葉が詰まり、蚊が鳴くような声になる純枝を見ながら、美香は憐憫の情を禁じ得ない。だが、それ以上に、何もできずにいる自分をふがいなく思い、無力感に苛まれていた。

「女の子の皆さんは、いつもはトイレットペーパーを使って、清めていることと思います。ですが、災害時には、物資の不足が予想され、その中にはトイレットペーパーも含まれるかもしれません。その場合、新聞紙など、他の紙が手に入るようであれば、それらのものを使用してもかまいません……」

 純枝の言葉からすると、トイレットペーパーではなく、新聞紙で清めさせようということなのかもしれない。だが、それは今まで繰り広げられた行為に比べれば、さいな出来事に過ぎない。

「ですが、今回は訓練ですので、それすらも手に入らない、最悪の状況を想定して行うことになっています。その場合の清め方ですが……」

 そう言うと純枝は、出し抜けに右手を前に掲げた。そしてそのまま、自らの割れ目へと導くと、その周囲で輝いている滴を拭い始める。つまりは、割れ目に残っているオシッコを手で拭い取っているのだ。

「このように、自分の手を使って、清めていきます……」

 あまりにも予想外の出来事に、美香は言葉すら出ない。それは、他の女子生徒たちはもちろん、男子生徒たちも同じようだ。

 そんな、驚愕の視線を一身に浴びつつ、純枝は丹念に、その部分を清めていく。

「左右の盛り上がりだけではなく……、わ、割れ目の中にも……、ゆ、指を、差し入れて……、丁寧に拭い清めてください……」

 それは、拭い清めるなどというものではなかった。傍目から見ても、そして実際の行為からしても、自慰行為オナニーそのものだったのだから。

「く、クリト……リス……も、大事な……部分ですから、丁寧に、拭い清めます……」

 純枝の息が少しずつ上がっていく。羞恥とは異なる感覚が、少女の身体をらせ、顔の赤らみをさらに増していった。

 それでも、股間についた尿の滴は量も多くなく、すぐに拭い去ることができたようだ。純枝の右手が、その部分から離れた。

 一方、お尻の方はどうなのか。これが清め方というからには、当然のことながら、そちらも同じなのか。おそらくそうには違いないのであろうが、それでも信じられない思いのまま、教室中がかたを飲んで見守っている。

「つ、次に……、お尻の方も、同じように手を使って清めます。細かなやり方は人によって異なると思いますが、お尻の割れ目に沿って上下に動かすと、拭いやすいと思います……」

 純枝はそう言って、教卓の上で半回転し、お尻の方を同級生たちに向けた。そして、少しお尻を突き出すようにすると、先ほどの説明通り、自らの右手をお尻の割れ目に差し込むような形で、上下に動かした。

「こびりついた、う、ウンチの……、量にもよりますが、指の感覚を頼りに、拭い取ってください。そ、それから……」

 自らの指をお尻の割れ目に何往復かさせる間に、純枝の息づかいが明らかに変わっていく。微かではあったが、どこか艶めかしいような、あえぎ声が混ざり始める。

 それを見つめていた美香は、少女がよがっているのだということに気づき、驚きを隠せなかった。そのことから、おそらくはアナル周辺が、純枝の性感帯なのだろう。とはいえ、本人ですら、知らないことだったのかもしれないが……。

「お尻の穴に、少し指を差し込むようにして、円を描くように……、あぁぅ! なぞってあげると……、お尻の穴の出口付近に残っている……、う、ウンチが、拭いやすいと、思います……」

 後は無言のままだ。あえぎ声をこらえつつ、肛門をまさぐっているその様は、お尻を清めているというよりは、愛撫しているといった方が正しかっただろう。

 そんな自慰行為……、ではなく清めを、三分ほども続けていただろうか。

 突如、ビクッと軽く体を痙攣させた純枝は、ようやくといった感じで、その箇所から手を離した。だがそれは、残便を拭い終えたと思ったためだったのか、それとも絶頂を迎えたためだったのか……。
 
 いずれにせよ、教室中に恥をさらした少女は、再び同級生たちの方へと向き直った。

 どこかぼうっとしている純枝を見つめながら、美香は強く思った。今度こそ、今度こそは……、と。だが、そんな願いは、たび、打ち砕かれることとなった。