こんど六年生になる見ず知らずの女の子と一緒に、温泉に入る話

第十話 抱っこしてくれますか?

「ねぇ、和人お兄ちゃん?」
「なに?」
「抱っこして?」
「うん……、んっ?」
 一瞬、言っていることが理解できませんでした。というよりも、言っている意味は理解できたのですが、それがどういう意図なのか理解できなかったのです。
「だ、抱っこ……?」
「瑠美、お風呂では、いつもお爺ちゃまに抱っこしてもらってるの。でも、今日は和人お兄ちゃんにして欲しいなぁ……」
 そこまで言った彼女は、少し上目遣いに私を見つめると、こう続けたのです。
「ダメ?」
 意図してそうしたのかはわかりません。ですが、それはどこか妖艶さを感じさせる、そんなしぐさと口調でした。
「だ、ダメって……。でも……?」
 そんな、相変わらず優柔不断な私の返答に、少女は重ねて問いかけてきました。
「抱っこして……くれますか?」
 ゴクリと唾を飲み込む私がいました。そして、思わず頷いてしまったのです。
「ありがとう、和人お兄ちゃん」
 嬉しそうにそう言った少女は、私のまさに目の前まで移動してくると、こちら側に背を向けました。そして、私の開いた両脚の間へ挟まれるようにして近づいてくると、その背中を私へとしっかりと押し当ててきたのです。
 いまや、彼女のなめらかな素肌が、私のお腹から胸にかけてあてがわれていました。ですが、それだけではありません。私の屹立している男根が、少女のお尻の割れ目にしっかりと挟み込まれるようになってしまったのです。
 自身の下腹部と、少女の双臀の間で身動きの取れなくなってしまったそのモノを、なんとか解放したかったのでしょう。無意識のうちに、彼女を少し押し戻そうとしたのですが、少女はそれを許さないようでした。
「抱っこするの……、イヤですか?」
 そう問いかけながら、今まで以上に強く、その臀部から背中にかけてを、私に押しつけてきたのです。
 そうまで言われてしまっては、無碍にイヤだとも言えませんでした。そして、拒否をするような行動も取れなくなってしまったのです。そのため、私は仕方なく、彼女の行動にまかせることにしました。
「和人お兄ちゃん……」
「な、なに?」
「お手々がまだですよ?」
「あ、あぁ……。ご、ゴメン……」
 私は慌てて、自らの両手を彼女の腰に回すと、その前側で交差させました。それでも、しっかりと抱き締めていいものなのか、判断がつかなかったため、それはほんの形だけのものでした。
「もう、違いますよぉ、和人お兄ちゃん……」
 ですが、少女はどこか不満げな口調で、そう言いました。
「抱っこって、こうやるんですよぉ……」
 そう言って、彼女が自らの手を動かし始めた、まさにその時でした。
「いやぁ、待たせてすまんのぉ。ひげも剃っておったら、時間がかかってしもうたわい。しかも、カミソリを忘れたもんじゃから、脱衣場に取りに戻ったりしていたからのぉ……」
 不意に聞こえた老人の声に、私は飛び上がらんばかりに驚きました。もちろん、突然の出来事だったためというのもあるのですが、私たちの状況を見た老人がどういう反応をするのか、わからなかったためでもあります。
 ですが、湯船の中で裸身を密着させている私たち二人を見たにもかかわらず、老人は落ち着いた口調で、こう続けたのです。
「なんじゃ、瑠美。抱っこしてもらっておるのか?」
「はい、お爺ちゃま……」
「ははは、すっかりと和人くんに懐いてしまったようじゃのう。儂のお株をとられてしもうたわい」
 口ではそう言っていましたが、特に不満なわけではないようで、その表情には優しげなものでした。
「瑠美は、和人くんのことが、よほど気に入ったようじゃのぉ」
 その言葉に、大きく頷いた少女を見て、当然のように嬉しく思っている私がいました。この通常ならざるシチュエーションにもかかわらずです。
「でもね、お爺ちゃまぁ。和人お兄ちゃん、ちゃんと抱っこしてくれないの……」
「それは、仕方がないことじゃて。なにしろ初めてじゃろうから。のぉ、和人くん?」
 私を置き去りにして、話を進めていた彼らでしたが、不意に話を振られた私は、頷くことしかできませんでした。
「じゃから、瑠美も文句ばかり言うとらんで、教えてあげねばならんぞ……」
「はぁい、お爺ちゃまぁ」
 彼女はそう言うと、再び手を動かし始めました。そして、自らの右手を使って私の右手をつかみました。そして、左手側も同じようにしてつかむと、私の手のひらをある場所へと導いていったのです。
 いまや、私の右側の手のひらは、彼女の左側の乳房へとあてがわれていました。同じように、左側の手のひらは、少女の右側の乳房を覆っていたのです。そのため、私の腕は、少女のお腹の前でクロスするような格好になっていました。
「これが、抱っこのやり方ですよ。よく覚えておいてくださいね。この先も、きっと役に立ちますよ」
 彼女の口調には、一切の迷いがありませんでした。そのことから、本心からそう思っているのだろうということは、なんとなく推測できました。
 ですが、もちろんこれが抱っこの一般的な方法などではないということは、高校生の私でもわかっていました。とはいえ、今までの出来事を振り返った時、そのことを指摘してもどうなるものでもないと理解できていたのでしょう。私は、なにも言わなかったことを覚えています。
「ほれ、和人くんや、もっとしっかりと抱き締めてあげんしゃい。それが愛情の深さを表すことに繋がるて……」
「は、はい……」
 それでも、かろうじてこう答えた私でしたが、どうすべきか迷ってもいました。ですが、意を決して、自らの脇を締めることで、その体制のまま少女のことを強く抱き締めることができたのです。
「うぅんっ……」
 少女が、不意に声をあげました。鼻から抜けるような、そんなどこか艶めかしさを感じさせるものでした。
「き、キツくない、瑠美ちゃん……?」
「だ、大丈夫です。和人お兄ちゃん……」
 そう言った彼女は、自らのお尻から背中を、今まで以上に強く私へと押し当ててきたのです。そのため、湯の中であるにもかかわらず、私と少女の間は完全に密着してしまっていたと思います。
 そんな彼女の行動のために、キツくなってしまったのは、私の方でした。もはや、これ以上大きくは……、と思っていた私のペニスは、さらに一段階大きさを増したのは明らかだったのですから。
「和人お兄ちゃんに抱っこしてもらって、瑠美、とっても嬉しいです……」
「そ、そう……る、瑠美ちゃんに、そう言ってもらえると、オレも嬉しいよ……」
 劣情に完全に支配されながらも、私がそう答えたのは、「お兄ちゃん」としての立場を逸脱したくなかったからなのかもしれません。
「和人お兄ちゃん……?」
 再びそう問いかけてきた少女に、私は性的興奮を強引に抑え込みながら、返事をしていました。
「な、なに?」
「おまじないも……、して?」
 その言葉に、再び困惑する私がいました。おまじないというのがなにを意味しているのか、そしてどうしてもらいたいのか、それがつかめなかったのです。
 そんな私の様子に気づいたのでしょう。老人が話しかけてきました。
「まじないというのは、瑠美の乳を揉んでやることじゃて」
 その言葉を聞いてもなお、動けずにいる私にたいして、少女があらためてお願いをしてきました。
「瑠美のおっぱいがもっともっと大きくなるように、おまじないしてください……」
 生唾を飲み込む私がいました。二人にそこまで言われ、それに今の状況を合わせるならば、それがどういうことを言っているのかは、高校生の頭でもわかりました。
「で、でも、いいんですか?」
「ああ、何度も何度も手間をとらせて悪いんじゃが、やってくれんか。女の子の象徴的な部分じゃて、もっともっと美しゅうなるように、よっく揉んであげんしゃい」
 さも当然のように答える老人でしたが、それはやはり普通のことではありませんでした。それでも、これまで執り行わされた数々の行為を鑑みれば、あり得ることかもしれないと思う自分もいました。ですが、いきなり実行に移すのは、やはりためらわれたのです。
「瑠美ちゃんも、いいの?」
 コクリと頷く少女の表情も、至って平然としたものでした。自分が、世間一般からしたら、とんでもないことをお願いしていることになど、気づいてもいないようです。
 そう思いながらも、私は手を動かし始めていました。それは、半ば無意識のうちに始めた行動だったのでしょうが、もはや意志の力では止めることはできなさそうでした。
「まずは、丸く円を描くように動かすとよかろうて……」
 老人の言葉に、またもや夢でも見ているかのような感覚を覚えていました。どこか、現実ではないような、そんな風に思えていたのです。
「あわせて、手全体を使って、揉みしだくような感じで……」
 まるで催眠術にでもかけられたかのように、私は忠実に実行に移していました。
「人差し指と中指を使うて、乳首もコリコリと揉んであげんしゃい……」
 そんな風に、指示を与える老人とは反対に、少女はなにも言いません。それでも、鼻息が少し荒くなっているように感じたのは、気のせいではなかったのでしょう。
 おそらくこれも、初めてのことではないのだということは、高校生の頭でもわかりました。いつもお爺ちゃまに抱っこしてもらっているとは、少女も言明していましたが、その中には、このマッサージも含まれているものと考えるのが自然だったでしょう。
 そして、まるで取り憑かれたかのように、少女の胸を揉みながら、これが全体的に華奢な体つきに反して、胸だけがあからさまな主張を見せている原因なのだろうとも確信していました。もっとも、科学的根拠などないとはいいますが、それでも、十六歳の少年としては、そう思わざるを得なかったのです。
 少女は、相も変わらず黙ったままでした。それでも、息を荒くし、体を微かに震わせているのはわかりました。そしてそれは、私の乳揉みによってもたらされているものだということは、高校生ながらにわかりました。それはもちろん、性的快感によるものだということも、本能的にわかっていたはずです。
 そんな反応を見せていた少女でしたが、しばらくすると、その両脚をキツく綴じ合わせ、太腿の内側を軽くこすりあわせるような素振りをも見せ始めました。それと時を同じくして、どこかモジモジとした感じを見せるとともに、その小さな両手を自らの股間に軽くあてがったのです。
 当然のように、それもおまじない……、端的に言えば、胸への愛撫によって引き起こされたものだと、私は思いましたが、実際にはそうではなかったのです。