「も、もう一度触るわよ、真綾ちゃん……」
触ってどうなるものでもないと思いつつ、冴子はあらためてそう宣言すると、肉棒へと手を伸ばした。彼女の手のひらの上でだらしなく横たわっているそれは、やはりペニスに他ならないのだろう。何しろ、オシッコまで出てくるのだ。そのうえ、精液まで出るとしたら……。自らのしなやかな指を少女のナニに添えていたとき、冴子はそのことに思い至った。どうなんだろうか。射精はするのだろうか。
聞いてみようかとも思った。だが、さすがに気が引ける。それよりも、いっそ試してみれば……。
頭ではそんな考えを否定しつつも、いつの間にか、冴子の手は、目の前の逸物を撫でさするような動きへと変わっていた。理性ではない、彼女の本能的部分がそうさせていたのだ。
「せ、先生……。な、なんだか、私……」
真綾の反応が、今までと明らかに変わった。それがなにを意味するのか、わからない冴子ではない。自らのことをすっかりと頼り切っている少女に対して、あまりにも非道な行いをしているように感じ、手を引っ込めようかと考えた。だが、心の奥底に湧き上がる黒い感情が、それを許さない。
突然、微妙な柔らかさを感じさせていたその器官は、冴子の手の中で鎌首をもたげ始めた。ゆっくりと、だが確実に膨張を続けるそれは、やがて怒張となり、少女の滑らかなお腹に張り付かんばかりに屹立してしまう。それは今や、鋼のように堅くなり、血管までをもいびつに浮かび上がらせていた。
そんな異変に、真綾も気づいたのだろう。固く閉じていた目を開けると、自らの股間の様子をうかがう。そして、そのあまりの変貌ぶりに言葉を失った。
「ねぇ、真綾ちゃん。こうなったのは、初めて?」
少女は目を見開いたまま、何も答えることができない。だが、その様子を見れば、そうであろうことは容易にわかる。
「男の子のオチンチンはね、気持ちよくなると、こうなっちゃうの……」
「わ、私、男の子じゃありません!」
「もちろん、真綾ちゃんはかわいい女の子。でもね、先生が見る限りでは、真綾ちゃんのこれは、オチンチンなのよ」
おそらく、彼女もそのことには気づいていたのだろう。ネットで調べたのかもしれない。冴子の言葉に、俯いたまま、黙りこくってしまう。
「オチンチンが大きくなっちゃうのを、勃起っていうの……」
少女に似つかわしくない怒張を指先で撫でさすりながら、冴子は話を続ける。
「勃起しちゃうこと自体は、普通のこと。何も恥ずかしがることなんてないのよ。真綾ちゃんが、きちんと大人になってきたっていう証拠なんだから……」
確かに、冴子の言うことに間違いはない。目の前にいるのが、思春期を迎え、身体の変化に戸惑っている男の子というのなら、むしろ模範解答とも言えただろう。だが、真綾は男の子などではないのだ。
「ねぇ、真綾ちゃん。オチンチンが勃起しちゃうとね……」
「も、もう、やめてください! 私……、き、聞きたくありません……」
真綾は両手で耳を塞ぐと、イヤイヤをするように頭を大きく横に振った。そんな様子は、冴子の良心の部分を苦しめた。少女の心情は痛いほどわかる。だが、ここまで関わってしまったからには、最後まで面倒を見ようと決心したのだ。
冴子は、少女の両手をつかむと、耳から強引に引き離した。抗議の声を上げようと保健教諭の顔を睨み付けた少女は、だが、その真剣な表情に何も言えなくなってしまった。
「ねぇ、真綾ちゃん……。落ち着いて、聞いて欲しいの……」
少女が抵抗しないことを確認して、冴子は話を続ける。
「もちろんこんな話、恥ずかしいってことは、先生だって十分にわかってるわ。でもね、真綾ちゃんには、正しい知識を得て欲しいの……」
そこで一度言葉を切った冴子は、真綾の様子をうかがう。自分のことを見つめたまま、彼女は身じろぎひとつしない。もう大丈夫だろうと、押さえつけていた少女の両手を離した。
「真綾ちゃんのこれがオチンチンだってことは、もう間違いないと思うわ。そしてね、オチンチンは、今みたいに大きくなっちゃうことがあるの。でもね、それは普通のことで、別に変なことではないのよ……」
真綾はもはや、身じろぎすらしていなかった。まるで催眠術にでもかけられたように、黙って冴子の話を聞いていた。
「それでね、真綾ちゃん。こんな風に大きくなっちゃうことを、勃起って言うの……」
少女の目を見つめながら、冴子は静かにささやいた。
「……言ってごらんなさい。勃起……って」
「ボッ……キ……」
真綾の愛らしい唇から、たどたどしくも、ついにその言葉が発せられた。その様子を、どこか微笑ましく見つめながら、冴子は続ける。
「勃起はね、エッチなことを考えたり……」
冴子は、クスッといった感じで笑う。そして、自らの指を再び少女の肉棒に沿わすと、優しく擦り始めた。
「……今みたいに、刺激を受けると起きちゃうの。でも、何度も言うけど、これは別に異常なことなんかじゃないわ。それどころか、真綾ちゃんが健全な肉体と精神を持っていますよっていう、証拠みたいなものなんだから」
保健教諭らしく、落ち着いた様子で話を続ける冴子だったが、自分自身も上気してくることがわかる。もちろんそれは、性的興奮のためなのだろうと、彼女自身、自覚せざるを得なかった。だが、悩みを持つ少女に対して抱いている憐憫の思いに、嘘偽りがあるわけではない。保健教諭として、そして一人の大人の女性として、なんとかしてあげたいという気持ちは本物だった。それでもなお、負の感情が湧き起こってくることは、仕方のないことだったのかもしれない。
「勃起をするっていうのはね……、えっと……、赤ちゃんを作る元を出す準備をしてますよってことなの……」
再び顔を朱に染めながらも、真綾は真剣な面持ちで聞いていた。
「でもね、もちろん赤ちゃんを作ろうって時じゃなくっても、こうなっちゃう場合はあるわ。というよりも、その場合の方が多いと思うの。だけど、これは全然変なことじゃないってのは、もうわかってくれたよね?」
真綾が頷く。
「勃起しちゃったオチンチンは、鎮めてあげないとダメなのよ。このままにしてると、身体にも悪いの……。それでね、鎮め方は何通りかあるんだけど……」
冴子は突然、少女のペニスを弄っていた自らの手の動きを変えた。それまでの、優しく緩やかな動きから、激しい上下動へとである。そんな動きに伴って、真綾の身体は、小刻みな痙攣を見せる。今や真っ赤な顔をして、唇を噛みしめていた。
「どう? 気持ちよく……なってきたんでしょ?」
真綾は必死になって顔を横に振るが、それがウソであることは明らかだ。
冴子は、再び手の動きを変える。緩急をつけ、胴体部から亀頭まで丹念に愛撫を加える。鈴割れ部分からにじみ出た透明な液体が、少女の逸物が本来の機能を有しているであろうことを物語っていた。
「ああぁっ……、だ、ダメっ……。先生、先生……」
譫言のようにつぶやきながら、それでも真綾は、抵抗の素振りも見せなければ、逃げ出そうともしない。
「なあに、真綾ちゃん。やめてほしいの?」
それは、ほんのちょっとした悪戯心から出た言葉だった。真綾は、再び唇を噛みしめると、目もきつく閉じてしまう。口にこそ出さないものの、その態度はやめて欲しくないのだということを如実に物語っていた。本来であれば経験できるはずもない快楽に身を委ねている少女の姿に、冴子の愛おしさがますます膨らむ。
「ダメ、ダメ……、出ちゃう……、出ちゃう……。先生、オシッコ……」
「いいのよ、真綾ちゃん。そのまま、出しちゃいましょう?」
「ダメ……。だって……、こんなの……。オシッコが……。オシッコが……」
少女は、口を薄開きにし、つぶやき続ける。自らの肉棒に訪れた経験のない感覚に、戸惑いを隠せない。だが、なにかが湧き出るような、そんな感じに、彼女はてっきりオシッコが出そうなのだと考えたのだろう。だが、そうではないことは、冴子にはもちろんわかっていた。
その刹那、真綾は唐突に、身体を大きく震わせた。頭の中でなにかがはじけたような、そんな感覚を覚えたのだ。それと同時に、思春期を迎えたばかりの少女には似つかわしくもない怒張から、なにかが吹き出した。それは、天井までも届かんばかりの勢いだった。それと同時に、青臭い栗のような臭気が鼻をつく。
冴子は、すべてが終わったのだとわかった。そして、自分の目の前で、息も絶え絶えな真綾のことを、再び抱きしめた。
「真綾ちゃん、初めてなの……?」
茫然としている真綾の耳元で、優しくささやく。
「初めて……って?」
たどたどしく発したその言葉が、冴子の考えが正しいことを、逆説的に物語っていた。
「これよ……。精液出ちゃうの……、初めてなのね?」
冴子は、真綾の身体を離す。そして、自らの右手を少女の眼前へと差し出した。そこには、白い粘液状の物が、べっとりとついている。だが、それがなんなのか、少女にはわからない。
「これがね、真綾ちゃんのオチンチンから出てきたのよ。でも、オシッコなんかじゃないわ。これは精液っていってね、赤ちゃんの元になるものなのよ」
「私、こんなの……」
「大丈夫だから。落ち着いて聞いて、真綾ちゃん……」
再び取り乱しそうになる真綾を、冴子がなだめる。
「真綾ちゃんには、ちゃんとした知識を得て欲しいって、先生言ったよね? だから、最後まで聞いてくれるよね」
真綾が落ち着きを取り戻したのを見届け、冴子は話を続けた。
「さっきも言ったけど、これは精液ってものなの。言ってみて。精液……って」
「せい……えき……」
「そうよ。そして、その精液が出ちゃうことを射精って言うの。ほら、射精って」
「しゃせい……」
「これはね、全然恥ずかしいことなんかじゃないのよ。真綾ちゃんは赤ちゃんが作れますよっていう、ただそれだけのことなんだから」
そんな冴子の言葉に、真綾は思わず頷く。この場の雰囲気にすっかりと飲み込まれ、実はとんでもないことを聞かされているのだということに、少女は気づいていない。
「真綾ちゃん、射精しちゃうの……初めてだったんでしょ?」
少女はコクリと頷いた。
「初めて射精しちゃうことを、精通っていうの。だから、さっきの射精が、真綾ちゃんにとっての精通だったということね」
自らの手で精通に導いた、それも少女の精通を引き起こしたということに、冴子は感慨深い思いを抱いていた。だが、表だってはそれを出さない。
「でね、射精しちゃうと、勃起が鎮まって、小さなオチンチンに戻るのよ」
冴子の視線にあわせて、真綾も自らの股間へと視線を移動させた。そこには、すっかり萎えてしまった肉棒が垂れ下がっていた。絶対的に小さいのかということは別にして、確かにそれは、ここ数週間、見慣れたものではあった。
「これなら、真綾ちゃんのかわいらしいショーツにも、ちゃんと収まるでしょ?」
「はい……」
「何度も言ったように、勃起しちゃったり、射精しちゃったりすることは、全然おかしなことではないのよ。だから、そんなに気にしないで、ねっ」
少女が素直に頷くのを見て、冴子は少し明るく言った。
「それじゃ、先生の授業はここまで。真綾ちゃんのオチンチンをキレイにしたら、ショーツを穿いて、身体測定をしちゃいましょ?」
そんな冴子の振る舞いに、真綾もどこか朗らかな表情で頷く。誰にも言えなかった悩みを打ち明け、心の重荷が取れたような感じがしていた。
だが、実際には、何も根本的なことは解決していないということに、この時の真綾は気づいていなかった。それどころか、精通を迎えてしまったことで、さらに状況は悪化しているとも考えられた。だが、少なくともこの瞬間は、悩みから解放された少女が、確かにいたのだ。
(了)