「長いよっ!」
裕太と涼絵のやりとりを見ていた別の女子部員が、突然、声をあげた。怒っているわけでもなさそうだが、どこか苛立ちを感じさせる、そんな口調だ。
「ゴメン、ゴメン。裕太くんを見てると、つい弟を思い出しちまって……。風呂で体洗ってるみたいに、時間かかっちまってよ」
「わかったから、変わってよ。次、私の番なんだからっ」
「はいはい、わかりましたよっ。もう、そんなにカリカリするなって……」
そう言って涼絵は、その部員へと場所を空けた。だが、その少女の口調や態度は、いつものこととみえて、涼絵は言葉ほどには、気にしていないようだ。
新たなお世話係は、黒縁の眼鏡をかけ、髪を両サイドで三つ編みに結っている。少し神経質そうな、厳しい感じがする。
「それじゃ、裕太くん。次は、お薬の時間よ」
彼女は、ラテックスの手袋を両手に嵌めながら、冷徹に告げた。そして、かたわらにある無地のチューブを手に取る。そして、蓋を開けると、その中身を、自分の指へと押し出した。
裕太のオチンチンは、ふたたびすっかりと萎えきっていた。思春期を迎えていたにもかかわらず、その部分は幼児のようにツルンとしており、産毛すらも生えていないように感じられる。
もちろん、成長具合は人それぞれだ。しかし、オチンチンそのものは、発毛の兆しぐらいは見せていてもおかしくないぐらいに、成長はしているのだが……。
そんな、想像以上に未成熟な裕太のオチンチンに、女子部員は薬をすり込んでいく。いや、実際にはオチンチンそのものというよりは、その付け根部分と、睾丸部分に重点的に塗りつける。
「裕太くん、動かないでっ!」
突然、叱責の声が飛んだ。その言葉に、裕太はビクッとして、改めて姿勢を正す。彼女の振る舞いや言葉遣いは、まるで厳しい女性教師を思わせ、彼は純粋に苦手さを感じていた。
「動かないでって、言ってるでしょ!」
ふたたびの咎めに、裕太は困惑を隠せない。直立不動のまま、微動だにすらしていなかったからだ。
「オ、オレ、動いてなんか……」
「ウソおっしゃい! それじゃ、このピクピクしてるのは、なんなの?」
そう言って、裕太のオチンチンをペチペチと叩く。小刻みに痙攣しているそれは、すでに半勃ち状態になっていた。
「だ、だって……、そんなこと言っても……」
裕太だって、動かしたくて動かしているわけではない。いくら薬を塗るためとはいえ、異性にそんなところをまさぐられたら、勃起だってしてしまうだろう。それは、生理的に仕方のないことだ。
だが、彼女はそれを許さない。
「だって、じゃないでしょ。人がお薬を塗ってあげているっていうのに、こんなところ動かしたら、塗りにくくってしょうがないじゃない!」
そう言い放つと、今度は先ほどよりも強く叩き出す。
「ああっ、ダメっ! そんなことしたら、オレ……」
その刹那、急速に膨張を始めた裕太のオチンチンは、ふたたび屹立してしまう。
そんな、あからさまな変化が、お世話係の怒りに油を注いだ。
「動くなって言ってるのに、これはなんなの? しかも、オチンチンを叩かれて、こんなに硬くしちゃうなんて、ひょっとして裕太くん、変態さんなんじゃないの?」
自分で刺激を与えておいて、それはひどい言いようだった。本心から怒っているのか、それとも裕太を侮辱するためにあえて怒ったふりをしているのか、それは判断できなかったが、いずれにせよ、屈辱を与えるには充分だった。
だが、最大限に勃起してしまったため、裕太のオチンチンは、それ以上は動く気配を見せなくなった。
「……まぁ、いいわ。動かなくなったみたいだし。さっさと塗っちゃいましょう」
そう言うと、ふたたび薬を塗り始める。裕太は、勃起をしているにもかかわらず、不思議と精液が出そうな感じを抱いていなかった。こんな状況で、もし射精でもしようものなら、どんな目に遭わされるかわからない。その恐怖心が、そうさせたのかもしれない。
「脚、開いてっ!」
裕太は、即座に言われたとおりにする。
その脚の間を割って入るように、お世話係は右手を後ろに回した。そして、小ぶりな双臀や、その間の割れ目にも丹念にすり込んでいく。お尻の穴の周りをまさぐられたとき、その感触に、裕太は思わず身震いをしてしまった。その瞬間、しまったと思ったが、特に叱責などは飛んでこなかった。
「はい、私は終わり」
彼女は、表面についた薬品に触れないように、慎重に手袋を外しながら、そう告げた。相変わらず厳格な口調だ。
いまや、裕太のオチンチンも睾丸も、裏側の臀部まで含めて、薬品でテカテカと輝いていた。それは、少し離れた場所に立っている他の部員からでもわかるほどだ。
その薬は、おねしょパンツを穿いた際に、かぶれないようにするための予防薬だと、裕太には説明されていた。だが、それにしては、どこか腑に落ちない。わざわざ手袋をしたことはもちろん、それを外すときの慎重さからも、よほど強力な薬なのだろうことはわかるが、それでも、たかがかぶれ防止薬のためにそこまでするのが不思議にも思えていたのだ。
だが、その真の効能を知れば、これほど厳重に薬品に触れることを避ける理由が、裕太にも理解できただろう。それは、かぶれ予防の薬などではなく、強力な脱毛剤兼発毛抑制剤だったのだから。そのため、もともと産毛しか生えていなかった少年のその部分は、いまやそれすら見て取れなくなっていたのだが、そのことにまでは、まだ本人は気づいていなかった。
いずれにせよ、ようやく怖いお世話係から解放されたと思ったのも束の間、裕太に新たな声が飛ぶ。
「人になにかしてもらって、裕太くんは、なにも言うことはないのかしら?」
吊り上げられた目を見て、裕太は内心震え上がりながらも、慌てて答えた。
「さ、佐江お姉ちゃん。オレなんかのために、お薬塗ってくれて……、あ、ありがとう……ございます」
深々とお辞儀までしてしまう裕太。すっかりと彼女に圧倒されていたのだ。
だが、そんな裕太を見て、佐江はフッと笑った。そして、こう告げる。
「そうよ、裕太くん。人になにかしてもらったときは、ちゃんとお礼を言うのよ。お姉ちゃんだって、ただ怒ってるわけじゃないの。裕太くんがかわいいから、言ってるのよ。ちょっと厳しく感じるかもしれないけど、ちゃんと覚えておいてね」
今までよりも、わずかながらに優しい口調でそう言うと、次のお世話係にバトンタッチすべく、佐江は後ろへと退いた。
入れ替わるように、新たなお世話係が、裕太の前に歩み出た。その女子部員は、とても優しげな感じがする。よもや、裕太のことを辱めるようなタイプには見えなかったが、それでも実際には、羞恥と屈辱を与えてくることは明らかなのだ。そう思うと、女の子のことなど、なにひとつ信用できない。女性不信になってしまうように思えてくる。
「じゃあ、お姉ちゃんが最後ね。裕太くん、よろしくね」
「よ、よろしく……お願いします。由貴お姉ちゃん……」
知らぬ間に、裕太はこの異常な状況に順応させられていた。たどたどしくも、挨拶すらも自らするようになっていた。
「ちゃんとお願いできて、裕太くん、エラいエラい」
そう言って、頭まで撫でてくる。もはや、すっかり子供扱いだが、裕太もされるがままだ。
「それじゃ、パタパタしちゃいましょ。おとなしくしててねっ」
しゃがみ込んだ由貴は、床に置いたベビーパウダーの蓋を開ける。そして、パフを取り出すと、裕太のオチンチンをはたきだした。
直前に行われた薬品の塗布時に、最大限まで勃起してしまったままとなっていた裕太のそれが、さらにピクッと大きく動いた。柔らかな感触に、先ほどまでとは異なり、射精感が急速に高まってくることがわかる。
その動きに気づいた由貴は、クスッと笑った。
「裕太くん、くすぐったいのかなぁ?」
羞恥に曇る裕太の顔を眺めながら、彼女は続けた。
「……それとも、おもらししちゃいそう?」
優しげな声のまま、核心を突いてくる。なんのおもらしとまでは言わなかったものの、それが射精のことを指していることは、明らかだった。
裕太は唇を噛みしめた。わかっていたことだったが、このお世話係もまた、自分のことを徹底的に辱めるつもりなのだ。
「黙ってちゃ、お姉ちゃん、わからないなぁ……」
「オ、オレ……、おもらしなんか……」
そこまで言って、裕太は口をつぐんだ。思わず嘘をついてしまった瞬間、薬品塗布の時の佐江の姿が、フラッシュバックのように蘇ったのだ。
だが、由貴は、まじまじと裕太の顔を見つめるばかりだった。そして、にっこりと微笑む。
「そっかぁ、ゴメンね……。お姉ちゃん、てっきり、裕太くんが、白いオシッコ、おもらししちゃんじゃないかって勘違いしちゃった。そうしたら、今までのお世話、全部一からやり直しになっちゃうなって……。でも、それを聞いて安心したわ。だって、裕太くんは、嘘なんかつく悪い子さんじゃないものね?」
叱責はされなかった。だが、これはこれで、状況としてはむしろ悪化していたのかもしれない。由貴は、裕太の置かれた状況など、百も承知していただろう。だが、今の会話の流れから、裕太はなにがあっても、射精をするわけにはいかなくなってしまった。もちろん、射精の瞬間を見られるだけでも恥ずかしいし、今までのお世話を一からやり直すなど、まっぴらごめんだ。だが、それ以上に、嘘をついていないという言質を取られてしまったことが、最大にまずかった。もしこれで射精などしてしまったら……、考えるだに恐ろしい。
ゆっくりと、焦らすかのように、ベビーパウダーがはたかれていく。オチンチンはもちろん、睾丸、臀部、そして股の間まで、丹念に、時間をかけて……。
裕太は、唇を噛みしめ、両手を強く握りしめていた。それは無意識の行動だったが、なにかを必死に我慢していることは明らかだった。もちろん、それがなんなのか……。そこにいる女子部員全員が理解していた。
どれほどの間、はたいていたのだろうか。いまや、おへそ周りから太腿まで、ベビーパウダーで真っ白だった。包茎オチンチンの先端、カルデラ状になった部分から微かに覗く尿道口の上には、特に厚く積もっている。
遂に、由貴がパフをケースに置いた。
「しょうがないか……」
つぶやいた彼女は、ふたたび裕太の顔を見上げた。先ほどと比べ、どこか残念そうな表情を見せていた。
「……それじゃ、これでパタパタはおしまい」
由貴は、遂に根負けしたのだ。裕太の股間部を見る限り、これ以上ベビーパウダーをはたき続けるのも、さすがに無理があるよう思えたのだ。
まぁ、今日はダメだったけど、また後日もあることだ。楽しみが残ったと思えば……。そう考えるように努める彼女だった。